こんにちは。行政書士の瀬野です。
最近、「空き家問題」についてのニュースをよく見ます。2030年には空き家が2000万戸に達するとの事ですが、実際の所どうなのかと思い少し調べてみました。
”2000万戸” と言われても、それがどのくらい多いのか分かりませんよね。
野村総研によると、2033年には空き家が約2150万戸に達し、空き家率は30.2%にまで上昇すると予測されています。つまり10件に3件は空き家になる計算で、近所を散歩していたら4~5件の空き家を発見する様なイメージです。
空き家が増える事によって、不審火などを含む火災や倒壊のリスク、治安と景観を損ねることによる付近一帯の土地価格の下落、等々の問題点が考えられますが、持ち主はどう考えているのでしょうか。
少し古いデータですが、2013年に価値総合研究所が実施した調査によると、次の様な結果でした。
7割の所有者「何も対策してないし特に困っていないのでそのままにしている」
残りの3割 「処分や活用を検討しているが難しい」
いざ空き家を賃貸に出したり売却しようとすると、所有権移転や資産価値の算定、契約、メンテナンスなど諸々の問題が具体的になり、その高いハードルを所有者が乗り越えられない、と言った問題点が見えてきました。誰に何を相談したらいいのか分からないのです。この様な空き家所有者に、適切なアドバイスや支援が出来るビジネス(空き家所有者と事業者をつなげるしくみ)が今後増えて来そうですね。
さて本日のお題は「母が原野商法で二束三文の土地を買ってしまいました」です。
一昔前に流行った原野商法ですね。最近はあまり耳にしませんが。
Q:母が父の退職金で二束三文の土地を購入してしまった様です。半年前、抽選で当たったカニ食べ放題温泉旅行に参加した際に同席していた業者から、「この土地は絶対に値上がりします!」「鉄道が通る予定もあります」「銀行に貯金するより断然有利です」「万が一、値上がりしなくても当社が高く買い取るので安心です!」などと言葉巧みに勧誘され、山奥の土地を500万円で買ってしまったと先日打ち明けられました。驚いてその土地周辺を調べてみた所、値上がりどころか全く価値のない原野であることがわかりました。支払った500万円をこの業者から返してもらうことは可能でしょうか。
A:典型的な原野商法の手口ですね。
その契約について、無効や取り消しの主張をして代金返還請求を行います。
以下は、原野商法で締結してしまった契約を解消する方法とその期間です。
⦿詐欺を理由とする取り消し(民法96条・126条)
期間:契約を追認できるとき(だまされている状態を脱したとき)から5年 あるいは
契約の時から20年
⦿錯誤を理由とする契約無効(民法95条)
期間:いつでも主張できるが早い方がいい
⦿暴利行為を理由とする契約無効
期間:いつでも主張できるが早い方がいい
⦿勧誘や契約条項の不当性を理由とする取り消し(消費者契約法4条)
期間:契約を追認できるときから1年 あるいは 契約の時から5年
⦿不当な契約条項による契約無効(消費者契約法8条・9条・10条)
期間:いつでも主張できるが早い方がいい
Q:こんなにたくさん返還手段があるのですか!落ち着いて見ないと何がどう該当するのか分かりませんが、代金を取り戻せそうでひとまず安心しました。
A:原野商法は、詐欺的行為により二束三文の土地を契約させるものなので、売り手と買い手の間に契約内容についての認識の食い違いが著しく、この点「錯誤による無効」にあたります。
また、ありもしない鉄道計画など虚偽の事実を述べて契約させている点は「詐欺による契約として取り消し」「不実の告知(消費者契約法4条1項)」の対象となり、”必ず値上がりする” などといった勧誘は消費者契約法の「断定的判断の提供」に該当します。
Q:無効や取り消しって、どう違うのですか?両方とも契約は解除されますよね。
A:代金返還請求のタイミングで説明すると、無効なら直ちに返還請求が可能で、取り消しならその業者に取り消しの通知を出し(内容証明郵便で出します)、支払った代金の返還請求を行います。
また、その業者は最初から虚偽の事実を並べ立てて契約をさせているので、この様な行為は民法709条の不法行為にも該当し、支払った代金以外にも損害が発生していたらその損害賠償も請求できます。
Q:適切な手続きを踏めば、代金は返還してもらえそうですね。
A:ただ、出来るだけ早期に取り掛かるのが良いでしょう。その様な悪徳業者はすぐに会社を閉鎖したりして行方不明になるケースが多く、そうなってしまうと相手方が特定できず手続きが難航するからです。
早め早めの対処が肝心です。